幸福はささやかに・・・

これまた大変!

 

 

 

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昨日、拒食症で何度目かの入院を控えている若い女性が見えました。

 

何度かこちらに来ているのですが、これまでに和尚様はじめ僧侶の皆さんのアドバイスも空しく、結局は何の解決もなく今に至っています。

(頑固で自我が強く、理屈っぽい。難しい感じです)

 

 

 

電話口で涙声の彼女はかなり悪い状態らしく、どこにも行けない状況が察せられました。それで(ただ話を聞くだけなら…)と今回だけ私が責任をもって会うことにしたのでした。他の人はこの日皆忙しかったのです。

 

 

痩せているのに太っていると思い込み、体脂肪も10%をはるかに切っていながら脂肪のあるものも一切摂らず、マッチ棒のような彼女をまた目にして、つくともなくため息が出ました。

黙っていると何時間でもいらっしゃるので、2時間限定でこたつの部屋で相対しました。

 

過食しては吐き、を繰り返し……入院したくないのに、こうなってしまってどうしていいかわからない…退院しても、その後に自信がない。

 

具体的には省きますが、そんな、内容でした。

見るからに疲れて今まで以上に精神もすこしおかしくなっているのがわかり、いたたまれない。

殆どこちらからは口を出さず、まず小一時間ぐらい全部話してもらい、その後でゆっくり会話しました。

彼女は高学歴で、仕事も資格のいる仕事に就いていた人です。

話の後半で、「今は、あるボランティアをしている」というその何気ない言葉にハッとしました。

 

私「今までで、一番いいお話を聞いたよ。今言ったお話は、他の人たちが喜ぶように感じる。あなたも楽しそうだけど、どうなの?」

 

Tさん「はい、そうなんですが、でも、現実から逃げるためにやっているだけで、自己満足に過ぎません」

 

「……どうして、逃げちゃダメなの?苦しいことから逃げるのはいけないことなの?」

 

「………」

 

「あのね、生きるとか、暮らすって、実は本当に些細なことの積み重ねなんだ。

ほんの小さなことで嬉しかったり、例えばお掃除して『ここがきれいになった、ああなんだか気持ちいいな』みたいな、そんなことだよ。大それたことなんて、何にもない。

でも、『ああ、嫌だ。なんでこうなんだろう、ああなんだろう』ってばっかり、悪いことや深い谷底ばかり見て、そこに留まっていたら、せっかくの小さな楽しいこともみんな消えてしまうよ。

あなたは、その、実は好きなことをやっていて楽しいんでしょう?」

 

はい」

 

「魂というか、無意識の底の底に、いいことも悪いことも繰り返せば積み重なる、と私は思うの。だったら、『ああ楽しい』『気持ちいいな』と感じるほうを貯金した方がいいんじゃない?でないと、ず~っと暗いことばっかりが出てきて、いつまで経ってもそればっかりになって、負のスパイラルに落ち込んでしまうよ。

自己満足でも何でもいいから、一日に一回でもちょっとでも、何か『ありがとう』って思えたり、楽しかったな、嬉しかったな、という気持ちを大事にしなさい……」

 

「帰ったら、まずお掃除しようよ? でも、全部一気にせず、今日はここまで、今日はここだけ、ってやれる分だけやるんだよ。無理しないで気持ちいいな、って思う程度に、ね」

 

 

そして、彼女の手を取って、「ぎゅ~ッと、これでもか、と握ってごらん」と言うと、彼女はごつごつした骨ばった手で私の両手を掴んで、ぎゅ~ッと握りました。

意外に力強く、なんだか私はホッとしました。

 

「ほら、あなたのいのちはこんなに強いじゃない。こんなに、力がある。

なんでもいいから、今見えていない本当の自分を信じてみて。

カロリー計算したり色んな栄養素の知識をため込んでも、それはただ小賢しいってだけで、本当のあなたではないし、幸せにはつながらないよ」

 

すると、彼女の顔がなんとなくほころんできて、ず~っと泣いていたのが止んできました。私も、最初より情が出てきて、いっそう「心から治ってほしい」と思いながら顔を見つめました。

 

ここを上手に利用すればいいよ、たった5分でも、あなたが勇気をもらいたい時、

「皆の顔を見に来ました」

と堂々と来ればいい。そうも伝えました。

それにいつもはすぐ「でも」「いいえ、…」と相手の会話を止める彼女が、私の言葉を黙って聞いているのが内心不思議でした。

 

 

「また、来ます」

帰るとき、そう言って車に乗った彼女。本当は彼女が運転するのさえこっちの方が怖いんですから、無理しないでほしいな、と思いながら見送りました。

でも、笑顔が見られたのは、よかったです。

 

 

 

いい話のように思われるかもしれませんが、こうした対話は、一言間違うと、おじゃんんになってしまう、綱渡りのようなものです。

実際何度も思い出して、(これでよかったかな、何か間違ってなかったかな?)

とかなり内省しているところです。食事については彼女はかなり知識があるので、それについてはいくら「食べて」と言ったって、却って逆効果なのは目に見えているので、一切話しませんでした。

 

 

ここにはお医者さんもいなければ、カウンセラーもいない。

それなのに、色んな人がいらっしゃいます。私はまだまだ何か甘く、おぼつかないけれど、もし対面することになった場合は、相手がいい方へ向かうことだけを祈りつつ、お会いしたいと思っています。

 

人の話を聞く。それだけでも責任がありますが、問題を抱えている方の苦しみは、全部はわからないし、理解できるなんておこがましいことも思いません。

その方が、話されて、ほんの少し楽になったら、それでいい。

 

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彼女が楽しく食べられて、元気になっていく姿が見られる日が来ますように!

 *少し重い話ですみません。